誕生日のサプライズから心の理論を考える

心の理論、これはなんとも言い得て妙だと思う。
はい。心の理論について考えてきたミサ太がこころの理論について魅力的に語ります😋

心の理論とは

他者は思っていることをもとに行動する。たとえ、それが事実とは異なっていても。
これが誤信念課題の本質です。
misacharo.hatenablog.com

他者の知識状態を操作すること

このこころの理論によって、
騙すことが可能になります。

チドリの偽傷行為を考えてみましょう(Ristau, 2013)。
親鳥は天敵の狐が巣に近づいてくると、巣から離れたところに飛んでいき、そこで怪我をして身動きができないフリをします。
狐は捕獲が容易な親鳥のほうへよっていきます。
すんでのところで、狐から逃げ、自身と子どもの命の双方を守ります。

相手にわざと誤信念を抱かせる、つまり知識状態を操作することが騙すことの本質です。
親鳥は「『私が本当に傷ついている』と誤ってキツネが思うだろう」という誤信念推論を行い、それにまんまと狐がひっかかるという仕組みです。
真実ではなく思っていることをもとに行動するという信念を狐はチドリに利用されているということになりますね。

一方で、この行動は心の理論を持っていると想定せずとも、オペラント行動でも説明が可能です。
親鳥の行動は「きずつくフリをする(行動)⇨狐が逃げる(結果)⇨自分と子どもの命が守られる(強化)」という3項随伴性にもとづいたオペラント学習によって説明がつきます。
この行動がこころの理論が関与しているのか、オペラント学習なのか、はまだ分かっていません。
個人的にはこんな複雑な行動がオペラント学習で成り立っているとは考えにくいけれど、
一方でオペラントで複雑な行動が獲得されるのも見てきているからなーとも思います(どっちなん😅)。
オペラント学習については別記事で。
また、ヒト以外の動物がこころの理論を持っているかについては深い深い議論があるので、それについても別記事で。

ばれたくないから、内緒にする

子どもはこころの理論を持っているのでしょうか。
そんなことを考えさせられる出来事があったので、紹介します。

姉の家では誕生日にサプライズでプレゼントするのが恒例行事になっているようです。

姉の誕生日に、姉が「今日誕生日だった」と言うと、
3歳の甥っ子が「今日は保育園のお迎えパパが来てー」と言ったそうです。
これを心の理論から考察してみましょう。

甥っ子は、
・お母さんに内緒、つまりサプライズでケーキを買いに行きたい。
⇨お父さんかお母さんが一緒でないとケーキは買えない。
⇨お母さんに買いに行くことを隠していたから、お父さんと一緒に買いに行く
⇨ケーキを買いに行くことをお母さんに知られたくないから、お父さんに「お迎え来て」とだけ言う。
というところまで考えたのではないでしょうか。

3歳の子どもが誰にも教えらたわけでもなく、このような発言をするようになるなんて、
ヒトのこころの理論はどこまで深いものなのでしょうか。
かなり高度な他者の気持ちを表象と言えるはずです。
子どもの発達、ヒトのこころの理論は本当に面白いですよね。

発達心理学の知見

何歳から、どういった過程を経て、こころの理論が発達していくのか、それは多くの研究者にとって主要な関心の一つです。
古典的なサリー・アン課題では4歳程度(Baron-Cohen et al., 1985)、
注視時間を用いた非言語的課題では1歳半程度(Onishi & Baillargeon, 2005)で通過するというのが定説で、調べ方によって大きな隔たりがあります。
また、「【『AさんがXXだ』と思っているBさんは誤って思っている】だろう」という2次の誤信念については6-7歳程度と言われています(Miller, 2009)。

調査で調べられることには限界があるのかもしれない。そんなことを考えさせられますね。
周りの出来事を心理学に照らして考えると、見え方が変わるかも🤣
この記事が少しでも皆様の生活に役立ったら嬉しいです。

引用文献:
Ristau, C. A. (2013). Aspects of the cognitive ethology of an injury-feigning bird, the piping plover. In Cognitive ethology (pp. 111-146). Psychology Press. 
Onishi, K. H., & Baillargeon, R. (2005). Do 15-month-old infants understand false beliefs?. Science, 308, 255-258.
Baron-Cohen, S., Leslie, A. M., & Frith, U. (1985). Does the autistic child have a “theory of mind”?. Cognition, 21, 37-46.
Miller, S. A. (2009). Children’s understanding of second-order mental states. Psychological Bulletin, 135, 749-773.